DUEL:01「薔薇の花嫁」<少女革命ウテナ>
あんたは玉ねぎ王国のお姫さまよ。
DUEL:01「薔薇の花嫁」
放送日:1997年4月2日
脚本:榎戸洋司 絵コンテ:幾原邦彦
演出:高橋亨 作画監督:長谷川眞也
じゃん。
『少女革命ウテナ』20周年を記念して、デジタルウテナノートをつくりました。
じつはその昔につくっていたアナログウテナノートもあるのですが、それをもとにもう少し詳細な感想と考察を書いてゆけたら。
ネタバレどころの騒ぎではないので、まだ見たことないひとは見たらいいのにな、と思います。
☞ 天上ウテナと憧れの王子さま
第1話でとにかく強調されるのは、ウテナの"王子さま"なるものへの強い憧れ。幻想といってもいいかもしれません。
守られるお姫さまよりかっちょいい王子さまになりたいの!
(若葉が西園寺に出したラブレターを揶揄する男子生徒たちに向かって)
"良い男"は読まない!
うんぬん。その理由はもちろん、1話以降も幾度となく繰り返されるあのプロローグによって説明されます。
ウテナは幼い頃、両親を亡くした自分を慰めてくれた思い出の王子さまに憧れるあまり、自分も王子さまになりたいと男装(≒王子さま装)をしているわけです。
しかし複雑なのは、彼女は別に"男"になりたいというわけではないというところ。ウテナは"王子さま"になりたい。"男"という身体的特徴が欲しいわけではなく、"お姫さまを助ける王子さま"という役割を欲しがっている。
この天上ウテナという人物は、おそろしく無邪気で鈍感、それゆえに傲慢さが目立つキャラクターなのですが、いたって単純というわけではありません。彼女は"王子さまになってお姫さまを救いたい"という願望を持つ一方で、"お姫さまになって王子さまに守られたい"という欲求も持ち併せているのです。いっけん矛盾するようですが、その矛盾こそが、ウテナが主人公たる所以なのではないかとも感じられます。
『少女革命ウテナ』という物語の住人たちは、基本的には"どちらか"であるといえます。守られるお姫さまになるか、救われる王子さまになるか。鳳学園という世界では、"両方"や、"どちらもいらない"は選べないのです。それゆえに、中間であり、もしくは"どちらも"選ぼうとするウテナは、この世界では人気者でもあり、そして異端でもあります。
しかし鳳学園って、どこかで見たことのある世界ですよね。
☞ 生徒会
生徒会です。
ルールや掟は忘れがちなのでメモ。
- 生徒会は、薔薇の刻印によって選ばれたメンバーで構成されている
- 掟を守ることが唯一のルール
- 生徒会の存在は「世界の果て」の意志
- 薔薇の花嫁はエンゲージした相手の思うがまま
生徒会のひとの紹介も少し。
☞ 桐生冬芽
芽。
赤い髪のひとです。"鳳学園"の生徒会長で、高校2年生。
☞ 西園寺莢一
莢(さや)。
緑の髪のひと。
生徒会副会長で剣道部主将。高校2年生。
アンシーと"ラブラブ"なのに、彼女を"好き放題"したり、もらったラブレターを人目につくような場所の捨てたりするようなクズ。
☞ 有栖川樹璃
樹。
オレンジの縦ロール。
フェンシング部長代理で高校1年生。ウテナとおなじく、男装の麗人です。
☞ 薫幹
幹。
青い髪の子。
フェンシング部で中学1年生。
ストップウォッチはたぶんこれ。生徒会という舞台を無事遂行するためのタイムキーパー。
☞ 影絵少女
『ウテナ』といえば影絵少女、影絵少女といえば『ウテナ』。そういっても言い過ぎではないくらいこのアニメーションの中での彼女たちの演出はとっても重要。唯一無二。
比較的まともでキュートなリボンがA子、クレイジーな三つ編みがB子です。
さて、記念すべき第1話の"影絵少女"は、
お友だちのために戦うおせっかいな勇者さま
。ふたりは、ウテナのことを"王子さま"とは表現しないのですよね。彼女は"王子さま"になりたいだけなのであって、まだそうではない。
ウテナが王子さまになれるのか、それともなれないのか、というのは、物語の重要なテーマのひとつになってくるところです。
☞ さかさまのお城(決闘広場)
ウテナはじめての決闘です。お相手は西園寺。
"女なるもの"から生まれた剣を武器に闘う"男なるもの"。
世界を革命する力を!
それはいいとして、"さかさまのお城"は西園寺いわく"蜃気楼みたいなもの"らしいのです。おまえほんとは全部わかってんじゃねーかよって突っ込みたくなる。そして彼をあまり評価したくはないのだけれど、本当にそうなのかもしれません。
ベイビー、俺のハートに火をつけたぜ。
挿入歌は「When Where Who Which」。
毎度おもうことですが、決闘広場へ向かうための螺旋階段、のぼるのめちゃくちゃ大変じゃろ。
☞ 姫宮アンシーと薔薇の花嫁
薔薇の花嫁こと姫宮アンシー。ウテナがその異質さゆえに"主人公"であるとするならば、アンシーはこの世界に馴染みすぎているがゆえに"ヒロイン"であるといえるでしょう。彼女はいつも受動的、そして"救われるべき者"です。
第1話の中でアンシーは、エンゲージ相手である西園寺に殴られたりはたかれたりとけっこうヤバイ目にあいますが、どんなことをされても抵抗したり、怒ったりはしません。彼(=エンゲージした者。決闘ゲームにおける勝利者)の思うがままです。アンシーは、西園寺に殴られると反省したような、落ち込んだような顔をしますが、これもまた彼の望みなのです。自分が叱ったら、しおらしくしていてほしい。世話のやける最低なクズ西園寺ですが、そんな人間にそこまで適応してしまえる同じ"人間"。
しかしアンシーはラスト、決闘で西園寺に勝利したウテナのもとに現れ、こう宣言します。
私は薔薇の花嫁。今日から私は、あなたの花です。
そう。アンシーは花だから、人間ではない。アンシーのこの徹底した花っぷりは、ウテナを見るうえでとっても重要だから指差しマーク。果たして"主人公"ウテナは、"ヒロイン"アンシーを救うことができるのでしょうか。
☞ LA BANDE
わざと負けるさ。
それで問題はないわけだ。
ええ。お好きなように。
今回、決闘に勝利してディオスの剣(≒世界を革命する力)を手に入れたウテナは、ほんとうに"お好きなように"できる。自分自身のことも、もちろんアンシーのことも。それはひどく魅力的な力。"花"を生かすも散らすも、すべて彼女次第。