永遠の卵

ウテナメモ

DUEL:07「見果てぬ樹璃」<少女革命ウテナ>

 

タラッタラッタラッタうさぎのダンス

タラッタラッタラッタうさぎ、うさぎ、うさぎのうさぎ

タッタタラタッタタラ

 

 

 

 

 

 

 

 

☞ DUEL:07「見果てぬ樹璃」

放送日:1997年5月14日

脚本:榎戸洋司 絵コンテ:橋本カツヨ
演出:岡崎幸男 作画監督林明美

 

 

橋本カツヨさんは、細田守氏の別名義。

 

☞ 有栖川樹璃と見果てぬ夢。

 

今回、冒頭で樹璃はアンシーのことをぶん殴っています。彼女はどうやら"薔薇の花嫁"に対して並々ならぬ憎しみを抱いている。

 

有栖川樹璃という人が求めるものはいたって単純。"奇跡の力"です。これは"叶わぬ恋を成就させる力"でもありますが、"女同士で幸せになれる力"ともいえるでしょう。

幹は、遠い昔に失ってしまった"輝くもの"を薔薇の花嫁の中に見出しますが、樹璃はそうではありません。"王子さま"と"お姫さま"、つまり"男なるもの"と"女なるもの"が作り出す"永遠"や"お城"、幸せ。薔薇の花嫁の力・ディオスの力(=世界を革命する力)とはそのことの象徴であり、彼女はそれを否定したいというわけです。

ただ、樹璃は"薔薇の花嫁の力"だけでなく"奇跡の力"も否定します。その"どちらも"を持っているのがウテナだというわけですね。彼女がこの回でウテナに反発を抱くのは、そのためだと考えられます。

これはわたしの想像に過ぎないけれど、樹璃は「"女同士だから"ダメなんだ」と言ってほしいのかもしれない。つまり「相手が枝織だからダメなわけじゃない」と。ウテナとアンシーがそれを手にしてしまったら、手に入れることができるのだったら、途方に暮れてしまう。矛盾するようですが彼女は、だからこそウテナに大きな期待を抱くのではないでしょうか。

 

☞ 生徒会(うっそー!3連勝)

樹璃は薔薇の花嫁の力を、奇跡の力で否定したいのさ。

あれっ。そうなんですか?

だが君は、本当に奇跡の力を否定したいのかな?

えっ。ただでさえわかりにくいんだから混乱させんといてくれや。これミスとかじゃなかったら、このアニメの中で一番難解な会話だと思いませんか?まあ、樹璃は薔薇の花嫁の力を、奇跡の力で否定したい。でもその奇跡の力が手に入らんものだから、奇跡の力まで否定しちゃいたいってこと...ですよね?

届かぬ想いを叶えてくれるのが、世界を革命する力だとすれば?
それでも薔薇の花嫁の力を、否定したいのかな?

あ?

 

今回はナイフ投げをする冬芽という演出でした。でも「うっそー!3連勝」が地味にすきなのでタイトルです。

 

☞ 有栖川樹璃の選択と失望

もう有栖川樹璃っていう字面からして何書いてもかっこつくといえば聞こえはいいけど、厨二丸出しになるのすごいや。

 

奇跡を信じて。想いは届くと。

すっかり忘れてたのですが、この話って本来は、樹璃と男の子は両思いだけれど、それを枝織に邪魔されたうえに彼を奪われた。つまり樹璃の叶わぬ想いが向かう先は男の子であり、それゆえに枝織を憎んでいる。その枝織の口癖というのが上記のものでした。だから樹璃は奇跡の力を否定したい。と"見せかけて"......っていう話でしたね。

 

ところでわたしは先ほど、樹璃はウテナに対し反発するが、同時に期待もしているのだ的なことを書きましたね。複雑なことに、彼女がウテナに抱く感情はそのふたつだけではありません。それが章タイトルにもなった"失望"です。

樹璃は、ウテナが持つ"奇跡の力"は、"女同士で幸せになれる力"であるという点に対し反発しましたし、だから期待もしています。ですがチュチュが夜泣きをした夜、偶然出会った樹璃にウテナは男装の理由を話すことになるのです。

 

こんな女性的な先輩をみたら、みんな驚くだろうな。

 

樹璃の私服姿をみたウテナの言葉です。この言葉が発せられた瞬間、樹璃は顔をしかめ、ウテナに男装の理由を尋ねます。ウテナは(馬鹿正直に)自分が男装するのは、王子さまの影響であると答えるのです。

 

で、その王子さまが言ったんです。君の強さ、気高さをどうか失わないでほしいって。

...その時の王子さまの姿、かっこよかったんですよね。

...あの人と僕の運命みたいなものは、信じられるんです。
それを奇跡と呼ぶなら、そうかもしれませんが。

なにも知らずに地雷を踏みまくるウテナさま。

つまり君の気高さとやらは、好きな男に言われてやっているだけの猿芝居なんだ!

 

まあ正直よくぞ言ってくれた感はありますが、ここまで怒られるとさすがのウテナさまもちょっとびっくりですよね。いや聞いたんお前やし...っていう。

 

それはいいとして、ウテナと樹璃の共通点って、"男装の麗人"というところですよね。樹璃はウテナのそういうところにも、勝手にシンパシーを感じていたのかもしれない。

樹璃が男装をする理由はおそらくですが、枝織のためなのかな、と思います。最初、彼女がウテナに「女性的」と言われてなぜ顔をしかめるのかよくわからなかったんです。

よくよく考えてみれば、あの事件(枝織勘違いして男ぶんどり事件)より前は、樹璃は女装してますよね。セーラー服着てるから。それはまだ"奇跡の力"、すなわち女同士で恋が実らせることができると信じていたからではないでしょうか。でも、そうではなかった(と思いたい)。女同士がダメと言われれば、じゃあ自分は"男なるもの"になってやろう。そういう意味での男装なのかなとも受け取れます。だから自らの女性性に対する嫌悪もある。

言っときますが男装だろうと女装だろうと、もちろんゲイでもヘテロでも、どんな格好をしようとその人の自由ですし、好きでしていることならそれが一番幸せなことです。でも、樹璃が男装を好きでしているんじゃないとしたら、"女同士"を否定されたから男装をするのだとしたら、その気持ちを抱えながらの男装は、どんなに虚しいことでしょう。

第1話のブログでも言ったのですが、鳳学園の世界で生徒たちは、"王子さま"か"お姫さま"しか選べない。そしてもっといえば、その組み合わせも"王子さまとお姫さま"のみです。そこから外れれば、健全ではないとされてしまう。そんな世界で仕方なく、彼女は"王子さま"を選んだ。

 

それで私は何を手にいれるのかな。
世界の殻を破れるのかな。

 

上記の台詞からは、そんな彼女の虚しさがこれでもかとあらわれています。

でも、自分と似ているはずの天上ウテナは、そうではありませんでした。彼女の話は樹璃が抱えるもどかしさや虚しさとは程遠く、どこかセンチメンタルな"王子さまとお姫さま"の物語です。そしてそれこそ"奇跡の力"だとウテナは言う。樹璃はそこに失望したわけです。

 

その正体を、私の剣が暴いてやる!

 

ウテナの持つ"奇跡の力の正体"とはいったいなんだったのでしょうかね。それは今回第7話では明かされません。

 

☞ 影絵少女

ここまでの流れを踏まえればわかりやすい今回の影絵少女。

少女Bは風邪をひいて遠足に行けなくなってしまうのですが、散々その行き先である動物園の文句を独りごちる。そこに少女Aが、

 

あんた、よっぽど行きたかったのね...

文句いって、拒絶して、でもいちばん欲しがってるのは他の誰でもなく、樹璃せんぱいなんですよね。

 

☞ さかさまのお城(決闘広場)

天使創造すなわち光」。

なぜ樹璃は闘うのか

樹璃が決闘をするのは、"否定したかったから"です。

彼女が否定したかったのは、奇跡の力であり、薔薇の花嫁の力であり、世界を革命する力でした。樹璃は男女の恋愛の力を否定するのと同時に、女同士の恋愛が成就する可能性と、その力をも否定しようとします。

「恋愛」というものがもつエセの力、めんどくさいと思ってたのよね、王子さまだ、お姫さまだ、愛だ、恋だって、まったくざけんじゃないってのよね。それだって正しいとは思います。だって『少女革命ウテナ』はその愛だ恋だを否定する物語でもあるからです。

 

いつか、想いが届きますように。

でも、樹璃の場合はまた別のはなし。

だって樹璃が一番欲しがっているのは、それこそ彼女が否定したがっているものです。恋愛の力を否定しながら、でもその実いちばん欲しいものが、恋愛の力。それを断ち切るためにも、樹璃せんぱいは闘います。そしてだからこそ、彼女はウテナが持つ"奇跡の力の正体"に負けてしまうのだ。

彼女は剣の腕では決してウテナに負けません。ウテナが奇跡の力を持っているとするなら、樹璃先輩だって同じようにそれを持っているはずです。"女同士の恋"は、決して叶わぬものではない。だから余計なお世話だと言われても、わたしたちはこう願わずにはおれないのです。

 

いつか、想いが届きますように。

 

☞ LA BANDE

そう。憎んでるさ。
こんな私の想いに君は気づいてさえいないんだから。

 

樹璃せんぱいに肩入れしすぎてパソコンの前で固まること約3日。やっと書き終えることができて嬉しいことこの上ないのですが、次カレー休憩挟んだらまた難しい回です。

ところでこれは疑問なのですが、この鳳学園における"男装"の定義ってなんだと思いますか?ウテナはまあ男装してるんでしょうが、樹璃せんぱい、正確にいえば生徒会の制服を着てるだけじゃない?そしたら七実男装の麗人なんでしょうか。それとも生徒会はやっぱり"男"じゃないと入れないホモソーシャル...?。

とりあえず樹璃せんぱいが29話でむかえるラスト、まじ鬼よな...ってとこに共感してくれるひとがいたらお話しましょう。