永遠の卵

少女革命ウテナのはなしがしたい。

DUEL:05「光さす庭・フィナーレ」<少女革命ウテナ>

おはよ。元気?

おはよ。元気元気。

 

 

 

 

 

 

DUEL:05「光さす庭・フィナーレ」

放送日: 1997年4月30日

脚本: 榎戸洋司 絵コンテ: 錦織博
演出: 金子伸吾 作画監督: 相澤昌弘

幹回後編です。フィナーレは終曲。最終楽章。

 

 

幹と樹璃

生徒会のフェンシング部ふたり組です。

樹璃せんぱいは幹の剣を、「純粋ゆえの勢いがある」と褒めるのですが、直後に「君の剣は戦うためじゃないな」と忠告します。

やさしい。このふたり組、名前をつけるとしたら"暗黙の了解"だと思うんですけど、好きです。少女革命ウテナには多くの良きふたり組が登場しますが、その中でもものすごく穏やかでいい。いい意味で波風が立たないところがね。

 

 

幹と"薔薇の花嫁"

前回で明らかになったことですが、幹は過去に失った"ピアノの音色"(=輝くもの・光さす庭)をアンシーの中に見出しています。

そして、その過去に失ったものが具体的に何かっていうのが、この5話で明かされますね。幹の双子の妹・梢ちゃんのことでした。幹は、梢ちゃんのピアノの音色を「すばらしかった」と形容します。自分がいくら弾いたところで、あんな音色を出すことはできなかったと。そしてアンシーのピアノこそ、幹の求めていたものである。

つまり、彼の求めるものは実は"アンシー"ではなく"アンシーのピアノ"だということです。幹は"薔薇の花嫁"にはウテナ同様興味ない、と言いますが結局は同じことです。"薔薇の花嫁"とエンゲージすることで手に入るという"世界を革命する力"。"アンシー"を手にすることで取り戻すことのできる"輝くもの"。それはたぶん、"自分のため"のもの。

 

 

生徒会(うさぎさんリンゴ)

今回の生徒会で、幹は緊急動議として「生徒会の解散を提案します。理由としては、

  • どれほど大きな力が手に入るとしても、姫宮アンシーという一人の人格をないがしろにするこんなシステムは認められない。
  • 「生徒会」のしていることは人間にとって何か大切なものを壊している。

まあ正しいといえば、正しいことです。でもこれ、見たひとはもちろん知っていると思うけれど、全部ウテナの言ったことの受け売りですね。やっぱり彼はウテナより1歳ぶん、こどもです。彼の述べた上記の"理由"よりも、冬芽の、

自分が本当に何を求めているのか、若さが邪魔をして見えないことはある。

という言葉のほうが、彼の考えの本質を捉えているような気がします。幹は、自分が"アンシーそのもの"ではなく"アンシーのピアノ"がほしいのだと願う自分に気づいていないのです。アンシーのために。僕はアンシーのために「生徒会の解散」を提案するのだと思っている。

ところで今回の生徒会はあの「うさぎさんリンゴ」です。シュールな生徒会演出は、ここから始まるのだ。

 

 

幹と決闘。

しかし彼はあんなに「アンシーのために」という姿勢を崩さずにいたのに、なぜ結果、決闘でアンシーを奪い合うに至るのでしょうか。訂正。姿勢は崩さないんですよね。崩さないからこそ、そうなった。

彼が決闘を決意したきっかけは、冬芽のこの言葉です。

本当に大切なものは、自分の手にいれて守らなきゃ、人にとられちまうぜ。

エンゲージした者だけが、花嫁を思うがままにできるんだからな。

初胸はだけ冬芽。彼は全部わかっててこういうことを言うわけです。彼は生徒会長として、ウテナと幹を決闘させねばなりませんから。直前に、幹のかつての"輝くもの"であった梢ちゃんと関係を持っているというのも、わざと幹に見せてるというわけ。

でも幹は、"花嫁を思うがままにしたい"という理由で決闘に参加し、アンシーを闘いによって奪い合うことがどんなに身勝手なことかっていうのはわかっているはずです。そしてだからこそ彼は、「アンシーのために」を大義名分にすることで、身勝手な自分の気持ちを正当化しようとするのです。「自分のために」

妹のピアノは本当にすばらしかったんだ。
今度は、なくしたりしない。絶対に。

「ピアノは好きですか?」「ええ」「また僕のために弾いてくれますか?」「ウテナさまがいいっていえばね」「明日はどう?」「ウテナさまがいいっていえばね」「なんでも天上先輩の許可がいるんですね」「だって私は薔薇の花嫁ですもの。」「じゃあ、天上先輩がピアノを辞めろって言えば辞めるの?」「もちろんです。私はエンゲージした方の、思うがままですから」

 

この会話が絶妙。このあとにリフレインする梢ちゃんと、冬芽の言葉も含めて。ここで幹はウテナを仮想敵として、はっきりと自分の思いを正当化させ、決闘を決意します。「アンシーの音色を守るために」。

話は少し逸れるようですが、このなんでもかんでも「ウテナさまがいいっていえばね」であしらおうとするのは、保険のセールスとかがしつこい時に「主人」を出すあれに似ている... だけに幹が痛くて痛くて仕方ない。

 

 

影絵少女

今回は少し難解。

でもカシラ、カシラの宝箱にはどうしてカシラが本当に欲しいもの"だけ"ないんですかい。

だって、だからカシラはまだ海賊のカシラを辞められないんでげしょ?

そして、「本当に欲しいもの」にカシラが気づいたとき、船は沈んでしまう...という演出。

幹が本当に自分の欲しいものに気がついた時、幹の船は沈んでしまうんでげす。

 

 

さかさまのお城(決闘広場)

BGMは「スピラ・ミラビリス劇場」。

そこだ!ウテナさま、やっちゃえー!

アニメ史上に残る?名言です。前回のブログでいった、でんでんむしもマングースも生タコもかき氷も許せた幹の、唯一許せなかったものが、これです。この言葉がアンシーから発せられた瞬間、幹の"輝くもの"という幻想がいっきに壊れてしまうのです。

どうして誰も輝くものになってくれないんだ...

「彼女は僕を信じてるんだ」という滑稽すぎる幻想。

でも、幹はまだ気付かない。気付かないふりをしているのかな。だって気づいたら船が沈んでしまう。だって、だから幹は、海賊のカシラを辞められないんでげしょ?

 

 

彼らのフィナーレ

実は梢ちゃん、ピアノが下手くそでした。想像できないオチでもない気がするけど。光さす庭、輝くもの、美しい音色なんてほんとはただの幻で、というよりも、ほんとはそれって、ふたりでピアノを弾いてた時間のことでした、というわけ。でも輝くものは取り戻せても、過去の時間は取り戻せないから。そのことに気づいちゃったらきっと、船は沈んでしまうのかもしれない。

 

 

LA BANDE

あんたのお兄さん、かっこいいよね。

まあね。

次回は七実さま回。