読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

永遠の卵

少女革命ウテナのはなしがしたい。

DUEL:29「空より淡き瑠璃色の」<少女革命ウテナ>

 

あなたは奇跡の力に、どんな想いを託していたのでしょうか。
そしてその想いは、誰かにあてたものだったのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DUEL:29「空より淡き瑠璃色の」

放送日:1997年10月15日

脚本:白井千秋 絵コンテ:橋本カツヨ
演出:岩崎良明 作画監督:たけうちのぶゆき

 

ラスト樹璃エピソードです。今回の脚本は白井千秋さんというお名前になっていますが、もともとはDUEL:17DUEL:21、そして前回のDUEL:28を書いた月村了衛さんが担当されていたそうです。ただ、絵コンテの橋本カツヨさんがその脚本を気に入らず、しかも自分で書き直す時間もなかったために、彼は脚本に沿わずに絵コンテをきった。のだとか。

 

車とハイウェイ、世界の果て。

"世界の果て"とは、それを見る人間によってまったく異なる意味を持つものです。たとえば西園寺のみた世界の果ては、支配に忠実であれば自らもまた支配者になれるという"嘘"。梢がみたそれは、他者の欲望を受け入れ自尊心を捨てる"諦め"。幹は、自分の欲望を正当化させる"エゴイズム"。

樹璃に"世界の果て"を見せることは、むずかしい。彼女は棘を持っている。天敵の虫も死んでしまった。そこで派遣されてきたのが、土谷瑠果です。彼は、この世界でもっとも"うつくしい"物語を彼女に見せる。それは樹璃が嫌った、あのセンチメンタルな"王子さまとお姫さまの物語"です。

このお話はとっても残酷です。この世界を革命する者がウテナとアンシーだけなら、その他の人間たちは彼女たちの物語の、いわば伏線でしかありません。樹璃は世界を革命できない。奇跡の力は手に入らない。

 

有栖川樹璃の果て。

彼女のみた"世界の果て"は、このハイウェイの時点では、単なる諦めでした。枝織を救うために、自らの気高き想いを守るために、樹璃は瑠果に身を売った。彼女の椅子はまだ、枝織の椅子に向いていた。

 

ふたりのベッドルーム

人は時として、自分でも思ってもみないことを言ったり、またしてしまったりすることがあります。

 

君も、そうなのかい?

 

すべては彼女たちの物語の伏線。

 

僕が憎くて憎くてたまらないか。

エスとしか答えようがありません。あまりにも憂鬱なので書いてしまいますが、わたしはこの、樹璃が瑠果に無理やりキスされる場面がほんとうにきらいです。トラウマです。恐怖です。まさに侮辱。これ以上の侮辱はない。樹璃は同性愛者ですが、枝織に無理に迫ったりとか、そういうことはまったくしなかった。たしかに樹璃は、枝織への想いから解放されねばならなかったのかもしれない。でも、だからといって彼女の想いと、その証だったペンダントを踏みにじったらいけない。誰だってそんなことをする資格はない。みなさん薄々気づいているかと存じますが、わたしは瑠果がだいきらい。

 

永遠を運ぶゴンドラ(決闘広場)

わたし万物百不思議」。

 

花嫁。

瑠果が樹璃の剣を抜くカットは、最高に"うつくしい"。彼女が瑠果の"花嫁"になるということがなにを意味するのか。わからないひとには一生わからない。死ぬまでわからないよ。死んでもわからないか。こんなの悲劇でしかないのに、誰もが樹璃には目を向けない。なぜなら彼女はもう"花嫁"だから。

 

王子。

王子は必死で説得をします。憎しみを持てといいます。理不尽に対する怒りを持てと。それこそ理不尽だ。怒りと解放はたしかに似ているし、地続きかもしれません。でもその怒りを引き起こしたのは樹璃自身じゃないでしょう。そして王子と花嫁の力、ディオスの力は、そのセンチメンタルで彼女の想いを破壊します。

 

殺害。

その結果が、これです。これが果たして解放と呼べるのか。なんたる自己満足。しかし王子もまた、"世界の果て"のための駒でしかありません。ただのおさる捕獲ロボットです。花嫁を殺し、自分も死ぬのです。

 

影絵少女

うつくしき死。

ここで、樹璃のみせられた"世界の果て"の正体と、とらわれた"うつくしき物語"の全容が明らかになります。樹璃のほんとうの果ては、無。彼女が彼女であるための誇りは、瑠果と暁生によって奪われました。愛するひとのことを忘れた人間。"王子さまとお姫さま"の物語と、それに纏わる奇跡の力を否定する強さはもうない。王子と姫のどちらかを選ばなければならない虚しさ、その組み合わせしか許されないばかばかしさ。彼女のほんとうの怒りはそちらではなかったか。これを殺人と呼ばずになんと呼べばいいのか。でも、守られるだけのお姫さまにされてしまった樹璃の話はもうおしまい。ヒーローは、王子さまは、自分の命を削っても"お姫さまのために"死んだ瑠果だからです。彼の死は、うつくしく消費されます。死は、死そのものではなく、誰かを感動させるための道具として扱われる。物語のための死。哀れな王子さま。でもその褒美として、"女"が手に入る。だからぜったいに同情はしない。こんなのただの自慰行為でしょ。死んでもやってろ。

 

完成しない三角形。

樹璃は、ついにその想いを向ける先を変えました。そして枝織もまた。あの気高き橙の薔薇を散らしたのは、虫の毒でも、殺虫剤でも、お部屋の匂い消しでもありませんでした。

願わくばその想いが、届きますように。

これは瑠果のお話。ただのセンチメンタル。ただの猿芝居だよ。

 

LA BANDE 

そういえば、君にも好きな人がいるんだっけ。

いっちばん憂鬱な回が終わりました。なんと後味のわるい。次はウテナ回です。だいすき。ワクワク。