DUEL:25「ふたりの永遠黙示録」<少女革命ウテナ>
おまえの言ってることはさっぱりわからん。
- DUEL:25「ふたりの永遠黙示録」
- あたらしいお部屋・理事長館
- 生徒会(リーリーリー)
- プラネタリウム(理事長室)
- ふたりのベッドルーム。
- 車とハイウェイ、世界の果て。
- 影絵少女
- 永遠を運ぶゴンドラ(決闘広場)
- 大人のベッドシーン。
- LA BANDE
DUEL:25「ふたりの永遠黙示録」
放送日:1997年9月17日
脚本:榎戸洋司 絵コンテ:風山十五
演出:金子伸吾
作画監督:相澤昌弘・長谷川眞也・長濱博史
第3部・暁生編がはじまります。物語もいつの間にか半分を過ぎ、核心に触れる部分が多くなってきました。とりわけこの25話は、暁生編の導入としても、またウテナとアンシーの関係性という点においても、かなり重要な回といってよいでしょう。
あたらしいお部屋・理事長館
今回から、ウテナとアンシーはあのお化け屋敷の寮から出て、あらたなお部屋で暮らすことになりました。それが暁生の暮らす理事長館。なんか塔みたいなやつ。やたら広くてツルツルで高いとこにあってなんにもない、ちょっと奇妙なお部屋です。
予想外の展開。
今回のわたし的指差しポイントは、やっぱり暁生にとってなにか予想外のことが起き始めている、また彼がそのことに気づき始めたっていうところです。これまで、冬芽をはじめ御影・ウテナ・生徒会メンバーたちはどこか彼に操られ、利用されているかのような印象を受ける場面が多かったです。彼らは"世界の果て"を崇め、すべてのことは"世界の果て"の手中にあるといいうような。*1
ですが、本エピソードで、暁生は2度もこれまでとは違った心の動きを見せているように思います。ひとつめが、ウテナと若葉のやり取りに笑顔するアンシーをみた時。心の動きというか、アンシーの笑顔を快く思っていないのがありありとわかる暁生の表情をみて。いつもは気味が悪いほどににこやかな人なのにね。
そしてそのことが伏線となって、ふたつめ。決闘シーンです。ここで暁生は動揺をみせます。ディオスの剣が消えたことと、アンシーがウテナの胸から剣を抜いたことが原因です。ちょっと表情を硬くするくらいですが。冬芽もびっくりしてます。ラストシーンでは、
ディオスの剣が出現しなかった。
と、暗に暗シーを責め立てているような感がありますね。要するに、アンシーが自らの意志を持ち始めているということです。ウテナと心を通わせはじめている。そして、そのことを暁生はよく思っていません。"世界の果て"の意志とは外れたところで"世界"が動き始めていること(または世界がつくられたこと)に、彼は危機感を抱き始めているのです。
ところで細かいことなのですが、ディオスの剣は"消えた"のではなく、"出現しなかった"んだ。やっぱりそのオペラグラスじゃよく見えてないんじゃ。。
あともうひとつ余談、理事長室の"幕"が降りる演出っておもしろいな。黒薔薇編からあるんですけどね。あ、エレベーター音もまだちゃんと鳴ってるよ。
生徒会(リーリーリー)
御影の力添えによってやっと学園へと戻った西園寺ですが、もう決闘はしないそうです。
僕は世界の果ての部下になった覚えはない。
命令されて闘うのは、まっぴらごめんだ。
とのこと。そして新情報も入ってきたのでメモします。
- 薔薇の門をくぐると、決闘広場への階段の中央にゴンドラが出現。
- ゴンドラが生徒会メンバーらを新たなステージへと運ぶ。
ちなみに今回の演出は野球の試合。なかなか気合いが入ってるみたい。西園寺が捨て台詞を吐くのと同時にゲームセットで紙吹雪が舞うのがおもしろいです。そして去っていくのに合わせてメガホンが飛ぶ。
それにしても、世界の果てっていうのは、いったい何者なんだ。
プラネタリウム(理事長室)
あの星ですよ。
これは黒薔薇編から継続のコーナー。さて今回の暁生さんからの有難いお話は、ご自身のお名前の由来について。暁の明星(金星)からとられたそうです。へー。そして別名:ルシファー。堕天使のことです。これは、冒頭で若葉が言った「天使の微笑み」と対になっていておもしろい。
そして、アンシーは知らぬ間にそこにいる。眼鏡が光るバージョンの彼女は、いつにも増して不可解です。怒ってる?んだとしたら、"どっち"に怒ってるんだろう。ウテナの肩を寄せる暁生?それとも赤くなっちゃうウテナ?
日の沈まぬ限り、輝くことのできぬ星。
何を思って光輝くのか...。
それってまさかご自身のことじゃないですよね?自己陶酔も甚だしい。
ふたりのベッドルーム。
暁生編から新たにはじまる演出といえば、やっぱりウテナとアンシーのベッドルームの場面。わたしはこれが超だいすき。アンシーの髪がのびる!やはりアンシーは人ならざる存在!などと初見時ははしゃいでましたけど、アンシーはふだん髪の毛丸めてまとめてるだけなんだよね。ぜったい無理だと思うけどまあいいや。
話を戻して、今回のベッドルームの内容はこう。
というのがまずひとつ、とっても重要なこと。もうひとつ。
違うよ。うれしいんだ。
ねえ。もし君に何か困ったことがあったらまず僕に話してよ。なんでも助け合おうよ。君とはそういう友だちになりたいんだ。
ウテナ...すき...。はもちろんとして、ここでふたりの間にふわっと友情が芽生えている(のがわかる)ことが大切。そしてその言葉をきいたアンシーは、
わかりました。これからはあなたと助け合って生きていきます。
とかつて"誰か"と誓っている場面を回想します。これは、上記の"懐かしいひと"とも関連しているので指差しマーク。
ウテナさま。わたし、ほんとは...
DUEL:23でもそうでしたが、今後はふたりが"手をつなぐ"という演出も、非常に深い意味を持つことになります。
車とハイウェイ、世界の果て。
君の魂が本当に諦めていなければ
世界を駆け巡るこの音が聞こえるはずだ。さあ、我らとともに。
誘おう。君が望む世界へ。
暁生編のキーアイテムといえば、なんといっても車。とそれが走るハイウェイ。そして向かう"世界の果て"。車や、それを運転するひとは"大人"の象徴。DUEL:4でも書きましたが、『少女革命ウテナ』に登場する人物は"大人"と"子供"に分けられる。24話まではずーっと、"子供"の話でした。そして"大人"というのは言うまでもなく暁生のことです。捉えようによってはアンシーもかな。ちなみに冬芽は、
だって、俺はまだ...
。ここから、物語には"大人"が大きく関わってくることになります。
西園寺莢一の果て。
DUEL:9で、ウテナとアンシー・冬芽と西園寺の対称性について書いたのですが、今回もそんな感じ。ウテナとアンシーが友情を深めつつあるのに対し、西園寺は、
友情なんてこの世界にはないさ。
本当は誰より友情を求めているのに冬芽を信頼しない(と言い張る)西園寺。そんな彼を白々しく"友人"などと呼ぶ冬芽。これぞわかりあわないふたり。 冬芽は西園寺の気持ちを知りながらも、だからこそ彼を利用しようとします。
あの女の子は暁生さんに永遠のものを見せられて救われたのさ。
柩の中の女の子に"永遠"を見せられなかったことを今でも悔やみ、"永遠"を求め続ける西園寺。この事実を知ったことで、西園寺にとって"大人"は、信用できない存在からいっきに憧れの存在へと上昇します。そして彼の"諦めていない"魂は、暁生によって"世界の果て"を見せつけられることになります。権力、欲望、絶望、享楽、虚無、幻想、エトセトラ。そういったものが幅をきかせる世の中。その現実に絶望し、"世界の果て"に忠実であること。さすれば望むものがいつか手に入ると信じ込まされる哀れな子供たち。彼らにとってはその"世界"は未知であり、さも魅惑的に思えますが、実のところそこにあるのはただの"永遠"。の苦しみ。
影絵少女
さてさて勇者さま。ふたりでやってく難しさ。
果たしてあなたはご存知かしら?
影絵少女A&Bが戻ってきました!のっけから肝心なことを言ってくれます。のっけだからか。今回から"ふたりでやってく"ことになります。その喜びと、難しさのはなし。
永遠を運ぶゴンドラ(決闘広場)
「バーチャルスター発生学」。
決闘前シーンがリニューアル!。ほんとうにゴンドラができてよかった。あの螺旋階段を毎回昇るのはキツ過ぎました。ウテナがリップを塗るようになります。
僕はもうお前に負けた僕じゃない!
なぜなら俺は見たからだ。
...世界をだ。
やっぱ一人でやるより、
ウテナさま、いっしょに。
ウテナの剣が初登場。消えたアンシーの剣の代わりに、アンシーはウテナの胸から剣を取り出します。何度見ても最高じゃん。
ふたりよね。
気高き想いの薔薇よ。
お願い、示して。
気高き"城"の薔薇ではなく、気高き"想い"の薔薇。今回から、アンシーの中に封印された"ディオスの剣"ではなく、ウテナの気高き想いをベースにした剣によって、彼女は闘います。そしてそれを引き抜くのがアンシーであるという真実をみてください。つよい。
でも、車のライトをスポットに降りてくるディオスと、その力を甘受するウテナに変わりはありません。そしてそれこそが"難しさ"なんです。
大人のベッドシーン。
西園寺のやつ、せっかく友だちにしてやったのに。
冬芽が憧れる王子さま。ベッドの上で見下される友情と、芽生える友情。大人と子供。男なるものと女なるもの。つながれる手と離れる手。
友だちにはやさしくしてやれよ。
LA BANDE
遅いなあ。姫宮。
エンディングテーマも変わりました。今回はちょう盛りだくさんすぎて時間がかかっちゃった。次回は、
本当に仲のいい兄妹なんですね。
です。
*1:ちなみに"世界の果て"と"暁生"は必ずしもイコールではないとわたしは考えているのですが、このお話は長くなるのでまたいつか。